Ongoing Collective DIARY

ノスタル爺
2019年7月4日

扇風機のリズム風の優しい音で目がさめると右と左に天使が寝ていた。昨日の晩、愛娘たちがレジデンスに泊まりに来ていたのだっけ。髪の毛をやるから6時半に起こしてと、すっかりオシャレさんのおねーちゃんの言葉を思い出し、「時間だよ」と起こすと、あと5分といってスヤスヤとまた寝てしまった。お腹をペロリと出してまだまだ深い眠りの底にいる妹も。朝ごはんを作らないとリビングに降り冷蔵庫の中を見れば、Ongoingの屋上で取れたピーマンとナスが。ナスは薄切りにして水に浸し、ピーマンは千切りに。フライパンに油を敷いてナスとピーマンを炒め、そこにみりんと水で溶いた味噌を絡めて完成。母親が昔よく作ってくれた料理を、今は娘たちに作っている。「もういい加減起きなさい」と二人を起こすと、小さな妹は眠そうに朝ごはんを食べはじめ、おねーちゃんは長くなった髪をシャワーで濡らし几帳面に櫛をとおす。1時間以上も早く起きたのに、結局朝ごはんに時間がかかってしまい、ギリギリにレジデンスを出て車で学校へと送る。「また夕方にね」と、手と手でハイタッチ。失われた日常を追体験。
帰ってから善福寺公園へジョギング。毎回30分、週二で走ることにしている。英語の勉強も兼ねてBBCのインターネットラジオをききながら池の周りを走るのだけど、水を見ているといろいろな記憶が蘇ってきて、ニュースの中身が全く入ってこない。まあ英語だし、BGMみたいなものだね。
汗だくになりながら携帯をみれば「水道屋さんがきていますよ」とメッセージ。オーストリアのウィーンに留学しているタダちゃんが数日間レジデンスに泊まりにきていて、水道の修理の対応をしてくれたみたい。すぐにシャワーを浴びたかったのだけど、断水し工事をするそうで、リビングでしばしタダちゃんとおしゃべり。「日本マジでやばくないですか?」と2年間の不在の間に変わった日本の負のイメージを止まることなく話してくれる。こちらは止まることのない汗にまみれながらストレッチを続けタダちゃんの話を聞く。ふむふむ、そうだよね、ほんと。
やっとこさ工事が終わりシャワーを浴びる。前回の日記も偶然そうだったけれど、今日は大学で講義で、しかも最後の授業の日。タダちゃんと話をしていたせいか、彼女が仕切って作ってくれたピンクのOngoing CollectiveのTシャツを着ていざ出発。大学について、今日も一人で食事を済まし、授業へと。「今日で最後だねー」と生徒に話すと「えー、悲しすぎます」「この授業が一番楽しみだったのに」と泣けるコメント。僕もいろいろ話が聞けて楽しかったですよ。授業が終わるころOngoingで今度打ち上げをしたいとなり、もちろんいいよと答えるが、学生たちの半分以上が20歳以下だと知り、お酒は出せないことに気づく。ソフトドリンクの打ち上げか。
大学から帰り、天使たちに再び会いに。今日はおねーちゃんの英語の塾の日で、しかも年に一回の保護者参観なのでした。去年は、参観中爆睡していたので「今日は絶対寝ないでね」と念押しされる。授業が始まり、すぐに強烈な睡魔に襲われるが、娘に嫌われるのが怖く気合いで乗り切る。「ニョロニョロ」と娘たちが呼ぶ、タピオカのジュースをせがまれ購入。すぐ近くに「ゴンチャ」というものすごい人が並んでいるタピオカドリンクの人気のお店があるのだが、あくまで「ニョロニョロ」を選ぶのはメジャーには屈しないという血がさせるのだろうかと、どうでもいい想像をしながら一口もらう。甘い。
おねーちゃんを家まで送り届け、その足でOngoingへ。今日は父親と叔父がOngoingに来ていた。不定期で開催される「兄弟会」と称する父兄弟の飲み会の帰りに必ずOngiongに寄ってくれるのだ。お寿司のお土産を平日のカフェ担当のはるかと自分に買ってきてくれていて、それを頬張りながら父と叔父の昔話を聞く。ほとんどが聞いたことのある話の繰り返しなのだけど、それがまた耳に心地が良い。70歳をとうに超え、すっかり小さくなってしまった二人の老人の話は、圧倒的に暖かく尊い。
二人の小さな天使と二人の小さな老天使に挟まれた長くも短い1日。

小川希

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