Ongoing Collective DIARY

2019年5月10日

4月29日、ドイツ語のテスト。大学は政府に所属してるインスティチュートなのでドイツ語ができないとペナルティで学生証が貰えない。右翼すぎると思う。午後、合格したとメールが来る。Sがお祝いに煙草を一本巻いてくれた。そして新しいアパートの審査に通ったとメールが来る。急いで収入証明書など送らなければいけない。18時、lazylifeという展覧会とカフェがセットになっている場所で、オーストリア女性作家協会(vbkö)の会議。今年からメンバーになった。嬉しい。大して目立ってない私でも、地道に真摯にやれば、見ている人は必ず居る。ジュリアがお祝いにビールを奢ってくれた。しかし法案やらアジェンダやらドイツ語。今日中級のテスト受けてきた奴にこれは無理すぎるだろ。白目をむいた。
今日はなんだか(by シュガーベイブ)色々なことを決めなくてはいけない日でどっと疲れた。若干知恵熱が出ている気がした。
私にはメンバーとして一応投票権があるのだけど、ドイツ語だし、わからないことが未だ多いから、投票しないこともある。だって責任が持てないから。「am I awkward?(バカっぽいかな?)」とステファニーに聞いた。ステファニーは、知らないことを知らないと言える場所であることが大切だから、そう表現すべきだと言った。

4月30日。朝、語学学校に合格証を取りに行く。その後学生生活課へ。事務のおばさんがずっとドイツ語で話しかけてくる。分からないので英語で話してくれと言うと彼女の言っていることがドイツ語で分からないなら新しい学校証はあげられないと言う。いやいや、お前ただの事務員だろ!てゆーか違法行為だろ!とりあえずパニックのまま終了。その後ドイツ人の作家友達に電話して相談。明日たまたま大学の学長と会議があるからその前に一緒に生活課へ行ってくれるとのこと。不幸中の幸い。もし明日人種差別的なことを言われても学長のとこにそのままアポなしで行けるや〜ふい〜。
夜、双子のベビーシッター。眠い。

5月1日。新しい家の契約。風刺画風に描かれたドナルドダックみたいなおっさんが登場。このアパートにはアフリカ人はいないから安心してとか言ってくる。付き添いで来ていたヤコブの緑色の目玉がぐりっと私の方に動いて、そのアクションだけで「やれやれ」が伝わってきた。オーストリア人の老人ほんと頭おかしい。日本のネトウヨが年取ったらこんな感じなんだろーなー。きも。とりあえずAsian Rich Kidsの振りをして終了。条件でしか人を見ない人が山ほど居る。なんだかそれに対する対策に慣れてしまった自分が悲しい。でもいい人も居るから、落ち込むとかの前に「事実」だけ見る訓練をしよう” I was instantly angry at that moment but i need a strategy” 「結局さ、あいつは大人しくてお金をはらってくれる人に借りて欲しいだけなんだよ。ただそれだけ。」ヤコブは若い時にスペインに居たから、エゴイストには慣ている、だからいつも冷静だ。私は、昔は差別に一瞬で腹を立てていた。それは本当にお腹がかっと熱くなるものだった。私は弱くて私の言語はとても弱い。アダム、というキュレーター、このあいだのドクメンタをやった人。が、プロジェクトの説明の時に言った。”artist has a real political power.”その言葉がお守りみたいにぐさっとお腹に刺さって抜けない。
その後、ベビーシッター。国連近くの公園で遊ぶ。子どもは、見てない隙に花壇のチューリップを引っこ抜いていた。やめてほしいと思った。

5月2日。前述の友人と生活課へ。一応会話を録音する。友人の必死の説得で納得したおばさん。てゆーかおかしくね?学校から認められたテストの合格証なのに。本当にこういうレイシストなおばさんは早く死んだ方がいいと思う。
その後新居へ掃除に。ちょっと、まだ電気通ってないんですけど。面倒くせえ〜。とりあえずささっと掃除と、既に傷がついている床の写真などを撮影して終了。
来月ある展覧会のスペースの下見に行く。コミュニアルな感じで結構面白い。すごい燃える多田佳那子初キュレーション。
そのあとアトリエで制作。いつでもどの国でも、アトリエだけは一緒。秘密があり、友情がある。

5月3日。朝友達のビザ更新のためにお金を貸しに行く。ビザ更新は毎年大変だ。誰が口座に120万も入ってるんだよ。昔は移民局も無く、警察署でビザ更新だったらしい。口座証明のためのお金も、80万くらいで良かったそう。10年後には500万とかになってるだろうな。その時私はどこに居るんだろう。必死でお金をかき集めるのだろうか、それともどこか違う国に居るのだろうか。現地の言葉と母国語が混ざる、「コロニア語」というのがあると聞いた。英語だけだと、追い返されてしまう。ドイツ語のあとはどの言葉を覚えればいいんだろう。

5月7日 ヤコブとSと展覧会の準備。「作品が持つセクシュアリティ」について、話す。私は、Sの作品は優しくて無口でピュアな、kind of gentle, but when you touch only one tiny part, he gonna be crazyだと思うと話した。Sは嬉しそうに聞いていた。ヤコブの作品はセクシュアルなものが、ただのオブジェクトとしてある、それから彼は歌を、男が、マスキュリンをコピーして歌うから、いつもちぐはぐだ。すごくマッチョな男とフェミニンが同居してる感じ。Yは、態度も頭の中も古いタイプの、忙しくて紳士的な、アーティスト像があってそれを遂行している。それはYがヨーロッパで生き抜くためにそうなったんだと思うと、今も苦しくなる。去年の夏、Yは沢山泣いた。目が一切赤くならなくて、水が垂れてるだけみたいだった。雨を被った銅像に似てた。でもYはマッチョでいるのが好きなんだと言った。それを聞いて安心した。Yは結婚指輪以外アクセサリーをつけない。私は、Yの性別を知らない。
アトリエに帰るとRが居た。自分だけ展覧会のインビテーションが貰えなくて、寒い中フードを被って帰ってきた。一緒にメールを確認したけど、Rはきちんと招待状を貰っていた。悪いことも良いことも、からかってプレイフルなRが、子どもみたいにえんえん泣いた。いつもなんとなくRとはハグをしないのに、私は、思わずぐわっと抱きしめた。絵を、描かないと。描き続けないと、悪いことが起きないように。Rはただ淡々とそう言った。私はこの人に比べると未だ子どもなんだと思った。

多田佳那子

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