「Diorすきなの」
「ピュアポイズン」
と言って帰りがけにふりかけてくれた香水の匂いが手首からしている。
6時に目が覚めたけれど、なんとなく体がへんにだるくて、さむいのか?湯船を作って湯に入ってみて、そのあとまた少し眠った。
ナポリタンを作ったらめちゃめちゃ美味しそうになっちゃって「おいしそう」「めちゃめちゃおいしそうなものつくっちゃいました」と恐縮のようなきもちと共に発語。賄いだからという気持ち?人参とピーマンとキャベツとウインナー少しが入って目玉焼きの乗ったナポリタン、別に自分の冷蔵庫じゃないからなかなか難しいが年末に向けて冷蔵庫にあるものを一回さらにして、不安なところや足りないところをなくしてしまいたい、せっせと野菜を使っている。具に火を入れながら、少しバターを落として、胡椒を振って、ケチャップを少し焼き付けて、
フライパンのテフロンがナイフの先端でで100回突き刺しました、という先週は起こっていなかった表面の毛羽立ちを見せていて、一体何があったんだろうか、新しいものを買おうか、と不満な気持ちになる。あと、一番小さなナイフが一本ない。ステレオタイプな ”殺してそのあと証拠隠滅” の動きを連続ドラマ脳がフライパンとナイフに対して感じた。感じたのを違うよ、と思う。
「美味しかったです」と言われて「ありがとうございます」と返したのはなんかへんな感じがしてそのありがとうはやっぱ美味しそう過ぎる所の過ぎる余剰に関わっていそうだった、でもありがとうございますってのは別にへんじゃないなと思った、いつもなんて言ってるかっていうと「よかったです」だった、どっちにしろ食べ物が勝手に美味しくなっている、というきもちが根底にあって、そこに立って「よかったです」と比べると「ありがとうございます」は自分が美味しく作ったことを褒めてくれてありがとうございます、という感じにいま考えられるけどそうだったっけ?と思って、そうじゃなくて、たくさん野菜が冷蔵庫にあるの使わせてくれて「ありがとうございます」みたいな、美味しそう過ぎるものを作れた状況があるのはむしろおかげさまなんで、みたいなきもちなのだった、というのは「よかったです」もそう変わんないけど、よかったですのもう一つの根底には、誰にとっていつ何が美味しいのかは、はかれない、というきもちもある。
おがわさんにナイフのことを聞こうと思いながらカレーを作りながら、いろんなものが古いから、壊れちゃうだろうな、ふつう、と思う。ここはもう12年に差し掛かる。さつかさんとかひがしのさんとかのなかさんとか、展示を見にきて居合わせた人たちが小川さんとおはなししていて、なんかこういうのほんといいよな、と思っていた。
カレーもできて、お客さんが全員帰って、小川さんもいなくなって、ナイフのことを聞きそびれた、SNSの更新をしていたら大木さんがきて、ドイツパンの袋詰めをくれた。
焼いたプレッツェルをニコニコ食べながらお話ししながら、途中で日記の話になって、今日私なんだ、こりゃ大変だ、日記に書ききれないなと思った、昨日の出来事もまた別に日記に書かなきゃいけないっていう使命があった、大木さんが「いや日記は書こうと思えばいくらでも書けるけど、今書くかっていうと別だよね」と言っていて、そうか、いくらでも書けるか、と楽観的な気持ちになったけれど今書いてみるとなんも書ききれない。
注文されたコーヒーを淹れて、あれこれ片付けながら、さっき展示の写真が撮りきれなかったことを思い出して、
「大木さんって、アーカイブとかどうしているんですか」と聞くと
アーカイブってのを世の中簡単に捉えすぎている、取っておけるかとっておかないかだったらとっておいたほうがいいなんて小学生でもわかることなの、、、、
という話を聞きながら、飴屋さんの小説の、デスクトップ型パソコンを自転車のカゴに入れて持ち運ぶから壊れてその度にデータが消えて記憶も消える、という話も思い出していた。
夜、ふじかわさんに、なんのためにつくっているんだろうかとおもうよ、と聞かれた時の大木さんの語っている内容が指し示すことが、わかりすぎるほどわかって、わかることが嬉しいというか大木さんがそんな風に考えていることがうれしい、泣きそうになって泣かない方向に意識を持っていった。整体、という言葉を使っていた。自分は作るところでそれをやっているけれど、実行の点で弱々だ、大木さんのいろいろがその意識で実行されている、そう思うと尊敬の念が爆発した。
帰り支度をしていると、池田が
「あんたはるかをだいじにしなきゃだめだよ!」とバシバシ叩かれていた。今日よく叩かれてるのを見る。あとつつかれてもいた。
家で、サミットで買った半額の寿司の、いくらかねぎとろを「どっちがいい?」と聞かれて、「さっき私が選んだからどっちでもいいよ」と言うと、「選んでくれ、今日大木さんにはるかを大事にしなって言われたから」と言っていて「言っていたのはそういうことなのかな?」と笑いつつそしたらいくらを選んで箸で持ち上げる瞬間「ただ、このどっちかをえらぶとサーモンとマグロどっちを食べるかが必然的に決まることになる」
罠っぽい。
Ongoingで、今日の服の成り立ちを聞いた。
「これは何十年前の盗品」
「これはさいきん買った」
「これはもらった」
「これは最近もらった」
「これはアラタニウラノでのパフォーマンスの痕跡が残ってる」
「これとこれとこれが三重になって、イスラエルの色になってる」
「これは3日前モッシュしたら千切れちゃった、イスラエルで買った」
「Diorすきなの」
「ピュアポイズン」
と振りかけてくれた香水の匂いはもうシャワー浴びて一回眠って起きた今はしてない、最初書き始めながら、自分多分もう寝ちゃうんだろうなと思って実際寝た、起きて続きを書いていて、昨日のことを、日記では語り尽くせない、日記は語り尽くせないなと思う、かと言って私は話すともっと語り尽くせない、というか状況描写を言葉で行う時に事実がかたられているかというとそれは、事実を元にしたそのひとの語り口を聞いているだけなんだな、だから価値がないとかじゃなくて、むしろその頭の動きを含めた身体性の、表面を味わうこと、見事でも見事じゃなくてもすきだなって、思う、思うというか常ではなくて、思った出来事が今年は何回かあった。
齋藤春佳
2019/11/21 大木さん
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