スピード

最近は11月4日から始まるオンゴーイングでの個展に向けて、バタバタの日々。毎回展示が終わる度に、次回はもっとゆとりを持ったスケジュールを組もうと反省を繰り返してきたのに、今回も何も学ばずにまだ粘ってあーだこーだやってしまっている。最終プランの決定を後伸ばしにした事が既に致命的なアダになっていて、後悔からの反省中。がんばろ。

 

僕の制作は大体散歩から考えていく事が多くて、とにかく沢山の時間を歩く。風景をチェックしながら頭の中のことを一人でぶつぶつ言葉にして、アイデアを転がしていったりする恥ずかしいスタイル。以前は乗ってくると、結構な速足で歩いたりする事が多かったけど、前に万代君とフリースタイルフォトバトルの打ち合わせしている時に、僕が制限時間内での行動範囲を広げる為に、「自転車とか使ってやる?」って万代くんに聞いたら、分かってないなぁと呆れられた事があった。僕の質問が写真を撮るスピードと歩くスピード(対象を見つめるスピード)の関係性に無頓着だったからだ。

 

それから時々、わざとスピードをうんと遅くして(周りから見て怪しいぐらいの遅さ)長い時間歩いたりするようになった。すると、自分の見つめる対象が、それまでの歩くスピードの時と少し変わっている事にふと気付いたりする。歩道の植え込みの中に捨てられたリポビタンDの空き瓶が、絶妙な角度で逆さになって地面に接している。そんなものを見てグッときたりする。その良さがあまりに自分でも解りづらい感じだったから、そうか、この感じは普通に歩いていては目に映っても、自分がこれまでキャッチ出来ずにいた感覚なんだなと納得して、レベル上がった!みたいな感じでなんだか気持ちいい。

 

そう言えばちょっと前に、この日も制作の為に朝からずっと歩いていて、夕方16時ぐらいだっただろうか。近くにいた北松戸の競輪場が開催日だと知って、初めて競輪場に行ってみたことがあった。趣味を全く持てなかった(映画とか散歩とか読書とかは、どうしても仕事に結び付いてしまって、、、)僕が初めて持った趣味が自転車で、8年前にフィックスドのピストを買って、ペタルを踏んだ時のあの感動が今でも続いている。毎回乗り始める度に新鮮で、幸せなワクワク感が全く色褪せない。

 

初めて見たプロの競輪選手達は本当に速くて、くそカッコ良かった。レース中の駆け引きも見てて面白いんだけど、最終の一周とかで選手たちが全力でペダルを踏み続ける姿、ゴール直前に力の全てを出し切るフィニッシュの姿には圧倒された。まさに爆発したかのように、ぐうぁ〜‼︎‼︎と雄叫びを上げて果てる姿は、射精の瞬間そのものを連想させる。彼らの人生を賭けた射精には、並々ならぬ鬼気迫るオーラがあり、動物的な生存競争の構造やその厳しさや残酷さまでにも思いを至らせる。なんだか見ていて感動して興奮しながらも、生きる事の、何とも言えない圧倒的な儚さを見せつけられたような気がして不思議な感覚になった。

 

僕が作品を作っているのって、多分これなんだと思う。こんなレベルで意味とか沢山のことを超えて行きたいんだった。全身全霊で限界を突破しようとする射精は世界を魅了すると信じているし、自分もそんな射精をしてないと駄目なんだと、またまた猛反省させられた。

 

次は、阪中君のバトンの放置プレーに痺れを切らして連絡をくれた阿部ちゃんにバトンを渡しますyo!!!

 

柴田祐輔